チカーノタトゥーとは?意味や時計・女性などの定番デザインをご紹介!
2025/07/06
チカーノタトゥーは、アメリカ西部にルーツを持ち、メキシコ系アメリカ人であるチカーノ・チカーナの文化や歴史が背景にあります。特にロサンゼルスなどの都市部で広がったチカーノタトゥーは、宗教的なシンボルや家族への愛、個々のストーリーを表現する手段として発展しました。
その独特のスタイルは、刑務所文化やギャングコミュニティの影響を受けながらも、ブラックアンドグレーのタトゥー技法を基盤に高い芸術性を誇ります。また現在ではラッパーやアーティストなどの間でも愛され、世界中で高い人気を誇るスタイルとなりました。
今回はそんなチカーノタトゥーの歴史やブラックアンドグレーとの違い、そしてそのタトゥーデザインをご紹介していきます!
チカーノは、主にアメリカ合衆国に居住するメキシコ系アメリカ男性を指す言葉で、女性はチカーナと呼ばれます。この呼称は、彼ら・彼女らのアイデンティティを強調する意味を持ち、1960年代の公民権運動を背景に広く使われるようになりました。
当時、メキシコ系アメリカ人の若者たちは社会的な不平等や差別に抗議し、チカーノ運動を通じて自身の文化や歴史への誇りを取り戻そうとしました。
そして、20世紀初頭には移民や低所得層の若者たちが集まり、チカーノギャングと呼ばれるギャング集団が都市部で形成され始めました。特にロサンゼルスなどの都市では、貧困や社会的な疎外感がギャング文化の発展を助長し、その結果彼らはアイデンティティや仲間意識をとても重視する集団となっていきます。
こうして生まれたチカーノギャングは、単なる犯罪集団としてではなく、時には芸術や自己表現の場としても機能しました。タトゥーはその象徴的な芸術のひとつであり、個々のストーリーや信念、仲間との絆を表現する重要な手段となっています。
チカーノギャングから生まれたとされるチカーノタトゥーですが、今や世界的な人気を誇るまでに発展してきた独自のタトゥースタイルです。
ここからは日本でもラッパーをはじめとした有名人も愛するチカーノタトゥーの歴史について、詳しく紹介していきます!
チカーノタトゥーは、1920–30年代のアメリカで誕生したチカーノ文化と共に発展しました。
その後、1940–50年代には、アメリカ西部を中心に「パチューコ」と呼ばれるスタイルが台頭。この中で形成されたパチューコギャングは、現在のチカーノギャングの原型とされています。
当時、彼らの間では親指と人差し指の付け根に十字架を彫る習慣があり、これがチカーノタトゥーのルーツのひとつと考えられています。
こうして限定的なコミュニティで生まれたチカーノタトゥーが広く知られるようになった背景には、刑務所文化の影響があります。
1960年代以降、刑務所内では即席の道具やインクを使用してタトゥーが彫られるようになり、シンプルながらも洗練されたブラックアンドグレースタイルが発展しました。
このスタイルは、限られた資源を活用しながらも、精密なデザインを可能にしました。刑務所内でのタトゥー文化は、出所後のメンバーによって外部社会にも広がり、チカーノタトゥーが一般的なスタイルとして認知されるきっかけとなります。
その後スケートボードやHIPHOP文化の流行などの後押しも受け、チカーノタトゥーは国際的に評価されるスタイルとなりました。そして今日ではギャング文化の枠を超え、幅広い支持を得るスタイルとして定着しています。
チカーノタトゥーとブラックアンドグレータトゥーは、どちらも黒インクを主体としたスタイルですが、そのデザインと意味合いが大きく違います。
ブラックアンドグレータトゥーは、陰影を活用して写実的な絵画のような表現を目指す技法で、肖像画や風景画など幅広いテーマに用いることができます。このスタイルは、色を用いず、濃淡のコントラストのみで繊細かつリアルなデザインが特徴です。
一方、チカーノタトゥーはブラックアンドグレーの技法を基盤としつつ、チカーノ文化特有のテーマやシンボルを強調する点で異なります。例えば、宗教的なイメージ(聖母マリアやイエス・キリスト)、ロサンゼルスの都市風景、ギャング文化を象徴する文字やスローガンなどが頻繁に用いられることなどが挙げられます。
また、チカーノタトゥーはギャング文化や刑務所文化から生まれた背景があり、そのシンプルなスタイルには限られた道具を使って彫られてきた歴史が反映されているのも特徴です。
まとめるとブラックアンドグレータトゥーが主に視覚的な美しさを追求するのに対し、チカーノタトゥーは「チカーノ」というアイデンティティを重視する点で異なるスタイルと言えます。
ここからはチカーノタトゥーのタトゥーデザインをご紹介していきます。
チカーノタトゥーと一言で言っても、アイコニックなモチーフが様々あり、モチーフによって受ける印象も変わります。
ぜひ好きなモチーフを探してみてください!
このデザインは、「ツーフェイス(悲喜劇のマスク)」とレタリングが組み合わされたチカーノタトゥーの代表的なスタイルです。
またレタリングも「Smile now, Cry later.(今は笑え、泣くのは後だ)」というストリートの哲学を意味しており、ギャング文化を象徴するデザインといえます。
チカーノスタイルの象徴的なモチーフを多く含んだタトゥーデザインです。バンダナで顔を覆った女性やクラシックカー(ローライダー)はストリートカルチャー・チカーノカルチャーのアイコンとして扱われています。
また、上部の「Sacrifice(犠牲)」というレタリング(文字)は、過去や仲間、人生で払ってきた代償を意味していると考えられます。
ピエロのようなメイクを施した天使が大金を抱えているデザインです。純粋さと堕落、天使と金銭欲といった対比が描かれています。
その背景には荒廃した都市が描かれており、ストリートで生きる人々の現実や、金を稼いでそこから脱却するという意志を感じるデザインですね。
チカーノの中でも、リアリスティックに描かれた薔薇と懐中時計の組み合わせたデザイン例です。懐中時計は「時の流れ」や「人生の儚さ」を意味することが多いモチーフで、薔薇は「美しさ」の象徴とされています。
なので、この2つのモチーフを組み合わせることで「限りある時間・人生の美しさ」を表していると考えられます。
ツーフェイス(二面性)の概念を、天使(エンジェル)の対比で描いたデザインです。
一般的には仮面で描かれることが多いツーフェイスですが、天使(エンジェル)を用いることでまた異なる印象を与えますね。
背中一面に描かれたチカーノタトゥーのデザイン例です。
ピエロメイクの女性の美しさもさる事ながら、鳩(平和の象徴)や方位磁針(人生の指針)、ルーレット(運命と選択)など細部に至るまでメッセージ性が高いデザインといえます。
胸にギャングのような風貌の天使(エンジェル)を描いたチカーノタトゥーのデザイン例です。
天使(エンジェル)にこのような風貌をさせることで、純粋さと危険性を対比しています。
ギャングカルチャーから生まれたチカーノタトゥーらしいデザインといえますね。
フルスリーブで描いたチカーノタトゥーのデザインです。何かを憂うような表情をした女性が笑顔の仮面を片手に持っており、ツーフェイス的な表現をしています。
また、前腕には「1971」の数字と、美しくリアルに描かれたバラが並び、個人的な記念日・メモリアルを表していると考えられます。
腕にスカル(ドクロ)と女性がキスしている様を描いた、チカーノタトゥーです。
スカル(ドクロ)と女性がキスを交わす構図は「死すらも愛の前には無力である」または「愛と死は隣り合わせ」といったテーマが考えられます。
女性の涙が静かに頬を伝う描写は、とても儚く美しいですね。
胸にスカル(ドクロ)と自由の女神をあしらったチカーノタトゥーのデザイン例です。
自由の女神は、自由や正義の象徴でありながら、バンダナが加わることでストリート文化や抵抗精神を表していると考えられます。
前腕にピエロメイクの女性がタバコを持っているデザインとなっています。
女性の表情が哀愁を帯びており、タバコとその煙にとてもマッチしていますね。
足に数字のレタリングを施したチカーノタトゥーのデザイン例です。
レタリングもチカーノスタイルに特有のブラックレター(オールドイングリッシュ)で描かれおり、チカーノスタイルの代表的なスタイルといえます。
このタトゥーデザインは、チカーノスタイルのレタリングを駆使した駆使したスクリプト・スリーブで、力強いメッセージ性と美しい書体が印象的です。
文字ごとに異なるフォントを用いることで。視覚的なリズムが生まれ、感情や強さを視覚的に伝える高度なレタリング作品です。
顔にレタリング(文字)のチカーノタトゥーを施したデザイン例です。
このフェイスタトゥーは、チカーノスタイルで「Lisa」という人の名前と王冠のモチーフが組み合わされています。
名前のタトゥーは愛する人への敬意や絆を表す代表的なスタイルであり、顔に入れることでその想いの強さと覚悟を感じますね。
ふくらはぎにピエロメイクの女性とトランプのモチーフを組み合わせたチカーノタトゥーです。
普段は人を楽しませるピエロのメイクを施しているのに、すまし顔をした女性がとても印象的な作品です。
この胸のタトゥーは、チカーノスタイルの中でも特に「ギャング的・アンダーグラウンド」なテーマを前面に押し出した重厚な作品です。
全体から受ける印象は強烈ですが、とても細やかな描写と構成は、アーティストの高い技術力を感じます。
この背中一面のチカーノタトゥーは、圧倒的なビジュアルのインパクトとメッセージ性が融合したデザインです。
ピエロメイクの女性を中心に、懐中時計や煙、スプレー缶などが配置され、時の流れやストリートカルチャー、反骨精神を表していると考えられます。
そして、右下には「Don’t look back(振り返るな)」という大胆なレタリングが施されており、「過去にとらわれず前へ進む」という強い意志を感じる作品ですね。
足首にワンポイントサイズでレタリングを施したタトゥーデザインです。
チカーノスタイルには様々なフォントがありますが、こうした細く華麗なフォントは女性でも入れやすいですね!
足首に「プレイングハンズ(祈りの手)」のモチーフを描いたワンポイントタトゥーです。
小さめながらも繊細に描かれたこの手は、「信仰」や「希望」「家族・仲間への祈り」などの意味を表します。
チカーノカルチャーでも、代表的なモチーフとされています。
このタトゥーは、メキシコの「死者の日(Dia de los Muertos)」に登場する象徴的存在「ラ・カトリーナ(La Catrina)」を腕に美しく描いたチカーノスタイルの作品です。
顔にはシュガースカル風の装飾が施され、死と再生、先祖への敬意を象徴します。
バラの髪飾りや柔らかな表情には、哀悼とともに誇りや女性の力強さも感じられます。