タトゥーアーティストインタビュー連載、第3回目は第2回目でご紹介した彫みつさんの弟子である、おちさんです。日本のタトゥーの最前線で戦われている彫みつさんに、約1年前から弟子入りされたおちさん。今回はタトゥーとの出会いから彫り師としてのこれまで、そしてタトゥーアーティストとしての展望についてお聞きしました。
おちさんとタトゥーの出会いについて教えてください
小さい頃からヒップホップダンスをやっていたのですが、タトゥーを入れている方も多く、それがタトゥーに興味を持つきっかけになりました。
ー彫り師という職業を目指すようになったのはいつ頃ですか
芸術には幼い頃から興味があり、中学生時代には美術部に入っていました。おばあちゃんが絵の先生だったのでその影響もあるのかもしれません。高校生の職業選択の頃に偶然SNSで彫り師の方の投稿を見たことで、芸術の中でも「彫り師」という職業に憧れを持ちました。
ただ、どうしたら彫り師になれるのか当時は分からなかったので、高校卒業後すぐに彫り師の道に進んだわけではありませんでした。
ー卒業後は何をされていたのですか
当時彫り師以外にもアパレルやショップ定員にも興味を持っていたこともあり、まずは就職しました。今もアパレルのお仕事を続けながら彫り師として修行しています。
ー彫り師のどのようなところに憧れを抱いたのですか
作り上げたものがお客様の身体に一生残っていく中で、本人や作品を見た周りの人に良いと思ってもらえるならそれはすごく嬉しいことですよね。世の中には色々な絵に関わる仕事があると思うのですが、お客様の身体に一生残るという一針の重みに惹かれた部分はあります。
彫みつさんとはどのように出会われたのですか
よく行くバーに彫みつさんが来られたことがきっかけです。彫みつさんとの出会いが彫り師との初対面だったのですが、お会いしたことでやはり彫り師になりたいと強く思いました。最初はバーでバラのデッサンなどを描いて見せていましたね。
ーそこから弟子入りしたわけですね。最初はどんな修行をされましたか
それまでに使っていた画材道具と比べてタトゥーマシンは大きく、綺麗な線を描くことすら難しかったです。
そこで最初は、機械に慣れるために線や丸などを練習用のスキンを使って、練習をしていました。機械に慣れてきたら、次にぼかしを入れる練習、バラの絵を描く練習というように段階を踏んで練習を進めました。
ーその中で特に難しかったことはありましたか
鉛筆とは違って、針の多さ、インクの濃さによってぼかしのやり方の幅が広がるので、そのようなタトゥー独自の表現方法が難しかったです。
例えば、ポートレートタトゥーのような写真のようなリアルな作品ではいかになめらかに表現するかが重要になるので、格段に針の多さや細かさが増えますね。特に人肌の表現は少し色を入れただけでも大きく印象を左右するので、色の入れ方に相当注意が必要です。
ーお客さんを取るようになるまでどれくらいかかりましたか?
最初のお客さんに彫らせていただくまでには1年くらいかかりました。それから1,2ヶ月で、20名弱ほど彫らせていただきました。
ー最初どのようにしてお客さんを集めたんですか
彫り師を目指していることは、友人や周りの方も知っていたので最初は友人や友人の紹介から彫らせていただきました。そこからまた紹介していただき、口コミのように繋がって今に至ります。
こだわりとして、自分から「彫らせてください」とお願いして彫るのは違うと思っています。理想は、自分の作品を見て「この人に彫ってもらいたい」と思ってもらえるようになることですね。
ーこれまで彫った中で印象に残ってるタトゥーありますか
やはり一番最初に彫ったタトゥーが一番印象に残っています、特に針を入れる最初の瞬間は鮮明に覚えていますね。人肌に彫るのはとても楽しく、時間を忘れて熱中していた記憶があります。
その人には「これを入れたい」という思いがあると思うので、1対1で彫っていくその時間はその人のことをしっかりと考えて、100%の作品を描けるように心がけています。
おちさんの今後の展望について教えてください
技術的なところでは、ポートレートを強みにしていきたいと考えています。昔から、人物画や街の風景などの写実的な作品が好きだったので、しばらくは自分が興味のあるジャンルに集中したいと考えています。
彫り師としては、今よりも更に多くのお客様との接点を作っていきたいです。今のように友達伝いに広げていくのも良いですが、接点を増やさないと多くの人に自分の作品を知ってもらえません。SNSなどは自分を知っていただく良いきっかけになるので、今後力を入れていきます。
いずれは、私の作品を見てこの人に彫ってもらいたいと思っていただけるような彫り師になりたいです。
最後におちさんにとってタトゥーとはなんですか
自己表現です。自分の好きなものや、一生残したいもの、自分にとって意味のあるタトゥーを、選んだ彫り師さんに彫ってもらう。
そして数が増えるとそれが繋がっていって、その人を表す。それが私にとってのタトゥーです。