閉じる

INSCRIBE TATTOO新宿店YUKIさんにインタビューをしました – TATTOO JAPAN #8

YUKI:INSCRIBE TATTOO新宿店所属のタトゥーアーティスト、和風なデザインを得意とするが、オールジャンルに対応可能 @Yukidatattoo

タトゥーアーティスト・インタビュー連載、第11回は、INSCRIBE TATTOO新宿店で活躍するYUKIさん。
タトゥーアーティストとして活動を始めて約5年目の節目に、これまでの歩みや、タトゥーに対する価値観についてお話を伺いました。

異国で出会った「肌のキャンバス」

「最初は、自分に入れる気なんてまったくなかったんです」

そう語るのは、タトゥーアーティストのYUKIさん。彼女がタトゥーという世界に足を踏み入れたのは、スペインでの体験がきっかけだった。22歳の頃、旅行先のスペインで偶然目にしたタトゥー文化。そのとき、「人の肌に絵を描くって、面白いな」と、純粋な興味が芽生えたという。

帰国後、すでに決まっていた会社に就職したものの、その気持ちは消えなかった。半年後、見習いを募集していたINSCRIBE TATTOOに通い始め、昼は会社員、夜は絵の練習とアシスタント業務。週に一度か二度のペースで店に通いながら、技術を磨く日々が始まった。

「ダブルワークは正直めちゃくちゃ大変でした。計画性もないし、お金もないし(笑)。UberEatsの配達も掛け持ちして、なんとか食いつないでましたね」

「和風」との出会いと、逆輸入された日本

タトゥーアーティストとしてのデビューは、会社を辞めた直後だった。新型コロナでスタジオが一時閉店するなどのハプニングにも見舞われたが、約半年後にはプロとしてお客さんに針を入れるようになった。

YUKIさんの作品には、和風のモチーフが多く見られる。そのルーツは、スペイン時代の経験にあったという。

「スペインでは日本文化の展示がたくさんあって、逆に“日本ってすごい”って初めて感じました。外に出てみて、和の良さに気づいたというか」

見習い時代に描いていたフラッシュ(下絵)も、自然と和風の要素が増えていった。当時の練習台となったのは、和モチーフを求める外国人の顧客が中心だったからだ。

「当時いわゆる“和彫り”はできなかったので、ワンポイントで和風の小物を入れる、みたいなオリジナルなやり方を模索してました」

“おまかせ”がもらえるような存在に

4〜5年のキャリアを積む中で、YUKIさんの印象に残っている仕事は、最初に「完全おまかせ」で彫ったタトゥーだという。

「友達に頼まれて、その人の好みもなんとなく分かってたから作れたんですけど……本当にすごく喜んでもらえて。あれは今でも印象に残ってます」

今後目指しているのは、「おまかせで」と言ってもらえるアーティストになることだ。

「“おまかせ”って、信頼してもらえてないと無理なんですよね。最終的には、自分のスタイルがちゃんとあって、何を描いても『この人らしい』って思ってもらえるような、そんなアーティストになりたいです」

タトゥーは「内面を外に出す方法」

YUKIさんにとって、タトゥーは「自己表現」だという。

「旦那に『やっと外見が中身に追いついたね』って言われるんです。ふざけた性格だから、タトゥーが増えてくにつれて、らしくなってきたんでしょうね(笑)」

一方で、彼女自身が入れるタトゥーに「意味」を求めることは少ない。視覚的に「いいな」と思ったものを選ぶ。逆に、意味に強くこだわるお客さんの話は、できるだけ尊重し、そっと受け止める。

「私はその人の個性と調和してるタトゥーが好きなんです。その人らしさが出ていれば、それでいいと思ってます」

これからタトゥーを入れる人へ

最後に、これからタトゥーを入れようとしている人に、どんな言葉をかけたいかと尋ねると、YUKIさんはこう答えた。

「自分の身体なので、他人の考えより、自分が納得してるかどうかの方が大事だと思います。親に聞くなら“なぜダメなのか”をちゃんと聞いてみたらいい。理由がちゃんとしてなかったら、入れていいと思う。後悔するようなやつは入れない方がいいと思いますけどね(笑)。」

彼女の言葉には、タトゥーを「自分のため」に選んできた強さがあった。誰かの内面を、肌の上に表現する――その仕事を、彼女は静かに、誠実に続けている。