閉じる

タトゥーはファッション──Makoさんが歩んだ「背中の塗り絵」から未来まで – TATTOO JAPAN #7

Mako(@mako.tattoo.tokyo_777):タトゥースタジオ KAGEROU所属。ニュージーランドでの海外生活を経て、和彫りからリアリスティック、アジア系デザインまで幅広く手掛けるオールジャンル対応の若手アーティスト。徹底したカウンセリングと「焦らない彫り」が信条。

今回は、東京・池袋の人気スタジオ「KAGEROU」で活躍するMakoさんにお話を伺いました。
幼少期から身近だったタトゥーとの関係、海外での挑戦、今大切にしている価値観、そして未来の展望まで――等身大の言葉で語っていただきました。

幼い頃から「背中の塗り絵」で育ったタトゥーとの縁

親の知り合いに背中に大きく和彫りが入っている人がいて、小さい頃から背中に絵を描かせてもらっていました。マッキーペンで塗り絵みたいにして遊んでいて、「おじさん、背中に絵がある、塗ってもいい?」って(笑)。偏見とかもなくて、ただ楽しかったです。

自分にタトゥーを入れたいと思ったのもたぶん、強いて言えばそれがきっかけだと思います。ボディアートやピアスを含め、自分の身体を使って何かを表現するのがかっこいいなとはずっと思っていましたね。

ニュージーランドで芽生えたタトゥーアーティストの夢

英語を勉強したり喋ってみたかったのと、環境を変えたかったことがきっかけです。移住を視野に入れて、語学学校に通っていたのですが、ワーキングホリデイに切り替えて働こうというタイミングでコロナでロックダウンになってしまいました。

そんな中で、英語がネイティブじゃなくてもできる、自分がやりたくて、好きになれそうな仕事を考えると自然とタトゥーアーティストが思い立ったんです。

ニュージーランドはタトゥー文化がすごくオープンなんです。美容院に行く感覚でタトゥーを入れる人もかなり多いんですよ。そのような環境だったので、興味もありましたし、自分で自分に入れられたら楽だなと思って目指すことに決めました。

ニュージーランドでタトゥーアーティストとして永住することを考えたときに、やはり日本の和彫りは海外でも非常に評価が高いので、日本人アーティストとして和彫りが彫れればブランド力がつくと思いました。そこで、一度日本に戻って、日本の彫師さんに直接教わろうと決めました。

だけど、日本に帰ってきたらやっぱり居心地がいいし、ご飯が美味しすぎて!もうニュージーランドに帰れなくなりました。今後は日本でやっていきます!

帰国してから「彫師」としての第一歩

最初は個人でやっているタトゥースクールに通って、基礎を学びました。そこではマシンの持ち方とか、技術面だけじゃなくてカウンセリングの方法、経営のノウハウまで幅広く教えてもらって。本当に独学では分からないことばかりだったので、今振り返っても通って良かったなと思います。

その後、FLAG Tattoo Supplyというオンラインショップでブログ担当としても働きました。英語を活かして、海外の情報を調べてまとめたり、いろんなタトゥー用品をテストしたりして。おかげで知識もどんどん増えました。ある時、FLAG Tattoo SupplyがTHE INKっていうタトゥースタジオを出したんですよ。そこでタトゥーアーティストとして雇っていただけて、今年からはKAGEROUにご縁があって移った形です。

「焦らない彫り」と徹底カウンセリング

特別に変わったことはしていないんですけど、ずっと大事にしているのは「焦らないこと」「お客様と向き合うこと」ですね。
自分にはまだ「このスタイルしかやりません」っていう確立した看板があるわけではないし、まだ新参者だと思っています。だからこそ、オールジャンルでできる限り要望に応えることを大切にしていて、他のアーティストさんよりもデザインの修正を何度も繰り返すほうだと思います。
その分、オーダーから施術まで時間がかかることもありますが、そこは妥協したくない部分です。

もちろん、施術をパッと決めてその場で仕上げるスタイルの彫師さんもいて、それはそれでかっこいいと思います。でも、私はまだそういうブランド力があるわけではないので、しっかりお客様と対話して、ゆっくり、丁寧にを貫いています。

一緒に悩んで、一緒に決める

カウンセリングは、メールやDMでやり取りすることもあれば、直接スタジオに来てもらうこともあります。
「この画像のどの部分が好きですか?」「こっちはどこがいいですか?」と、細かく細かく確認していきます。一度下絵を出しても、修正があれば何度でも直して、完璧に納得してもらってから施術日程を決めます。いろいろな参考画像を見せながら少しずつ方向性を絞っていくんです。

打ち合わせだけで2ヶ月かかることも珍しくないですね。その分、デザインの密度はとても濃いと思っています。

タトゥーを入れるかどうかすら迷っている方も結構いるので、そんなときは「ゆっくり考えてくださいね」と伝えます。タトゥーは一生ものだからこそ、自分が入れた作品が、10年後に「やっぱり違ったな」と思われるのも嫌ですし悲しいので。

だからこそ、迷っている人には何度でも相談に乗るし、決まるまで待ちます。

タトゥーはファッションであり、自由でいい

絶対この質問来ると思ってました(笑)。

タトゥーとは、ズバリ ファッション です。

これは怒られちゃいそうですけど、和彫りだってもともとは着物の代わりだったり、ファッションの一部だったと思うんです。もちろん、「覚悟を背負う」とか「意味を込める」のがタトゥーの世界では主流だと思います。でも、タトゥーを「ファッション」って言う人が一人くらいいてもいいんじゃないかなって。見えるところだけに入っててもいいし、見せるためのタトゥーがあっても、それはそれで良いと思っています。

おじさんの和彫りを塗り絵みたいにして遊んでいたときは、ただ「おじちゃんの塗り絵かっこいいだろ?」って感じでした。見習いの頃も、和彫りがたくさん入っているおじさんが『俺のことキャンバスだと思って、好きに練習しろよ』って言ってくれて、いろんなタトゥーを彫らせてもらったんです。
そのときの気持ちは今も大事にしています。

もちろん、その人にとっては強い覚悟や意味があったと思うけれど、私が彫った部分はそのときの思い出であり、ある意味ファッションだったりもする。そういうふうに、タトゥーを自由に捉えて楽しむ彫師がいても良いんじゃないかな、と思っています。

もっと上手くなりたい。世界レベルを目指して

これからどうなっていきたいかって聞かれたら、もう単純です。とにかく、もっともっと上手くなりたい。
もちろん、商売としてお客様に提供できるレベルには達していると思います。でも、世の中にはもっとすごい人がたくさんいるし、自分の好きなスタイルで突き抜けている人を見ると、まだまだだなって思います。

ジャンルもすごく迷っていて、和彫りも好きだし、リアリスティックも好きだし、アジア系の花も描きたい。全部バラバラだから「結果オールジャンルじゃん!」って自分でも思うんですけど、インスタで一つのジャンルに特化して『これが私の看板です』って言える人は本当にかっこいいし、憧れます。

だから、将来的にはジャンルを絞って、自分だけのスタイルを持つのも一つの目標です。
でも今はまだ、オールジャンルで技術を磨きながら、自分の“これだ”を探している最中ですね。

でも、正直言うと…一生満足できない気もしてます。
それでも、ずっと「もっと上手く」を追いかけていたいです。